「アファーマティブ・アクション(Affirmative Action)」とは、主にアメリカ合衆国などで見られる、過去に差別を受けてきた特定の集団(例えば、人種的マイノリティ、女性など)に対して、教育や雇用などの機会において積極的な優遇措置や配慮を行うことによって、実質的な機会均等を達成し、社会的な多様性を促進しようとする政策や取り組みを指します。
簡単に言うと、歴史的な不平等や差別によって不利な立場に置かれてきた人々が、他の人々と同じスタートラインに立てるように、一時的に特別な配慮や支援を行うことです。
主な目的は以下の通りです。
- 過去の差別の是正: 長い歴史の中で特定の集団が受けた不当な扱いによる disadvantage(不利な状況)を解消する。
- 多様性の促進: 大学のキャンパスや職場などで、さまざまな背景を持つ人々が集まることによって、より豊かな学びや創造性が生まれることを目指す。
- 実質的な機会均等の実現: 法的な平等だけでなく、実際に誰もが能力に応じて機会を得られるような社会を目指す。
具体的な例としては、以下のようなものがあります。
- 大学入試: 入学者選考において、同じ学力や成績でも、マイノリティの出身者であることを考慮して合格させやすくする。
- 雇用: 採用や昇進において、特定の集団の候補者を積極的に採用したり、目標を設定したりする。
- 奨学金: 特定の集団を対象とした奨学金制度を設ける。
論争点:
アファーマティブ・アクションは、その目的は良いとしても、実施方法や効果について常に激しい議論があります。主な批判としては、
- 逆差別: 優遇される側でない人々(例えば、白人男性など)が、能力や成績に関わらず不利な扱いを受けることになる、という批判。
- メリット主義との対立: 個人の能力や努力ではなく、出自によって機会が左右されるのは不公平である、という考え方。
- スティグマ: 支援を受ける側のマイノリティが、「能力ではなく優遇されたからだ」というレッテルを貼られる可能性がある。
現在の状況:
特にアメリカでは、このアファーマティブ・アクションは長年裁判で争われてきました。そして、2023年6月にアメリカの最高裁判所は、大学入試における人種を考慮したアファーマティブ・アクションは違憲であるとの判断を下しました。 これにより、特に大学入試においては、これまでのような形でのアファーマティブ・アクションの実施が難しくなっています。
まとめると、アファーマティブ・アクションは、過去の差別を乗り越え、社会の多様性を高め、実質的な機会均等を目指すための意欲的な取り組みですが、その手法や影響については常に議論の対象となってきた政策です。